『失楽園』の主人公、久木と凛子の運命

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 暗い日、暗い街、暗い道を選んで歩いていると、先々の運勢が暗くなる、という法則を知っているでしょうか?

 
渡辺淳一のベストセラー『失楽園』の主人公、久木と凛子の運命を暗示しているものに「目次」があります。
 
落日、秋天、短日、冬滝、春陰、落花、半夏、空蝉などが並んでいるように、この二人は常に寂しい季節と日時ばかり選んでデートしています。
 
人間というのは不思議なもので、そういう日時に交わす会話は、必ず暗いものになってしまうのです。
 
それは明らかに運命の下落傾向を示しており、どうあがいても運命の好転は望めません。
 
ひとつにはこういう二人には笑顔が乏しくなるため、運が落ちると考える学者もいますが、いかに不倫だからといって、いつもいつも暗い街、暗い部屋にいるのは考えものです。
 
近頃は演歌が低調ですが、その理由に、いつもいつも北の国の恋ばかり、という聴き手の不満があるそうです。
 
つまり暗い恋や失恋は、暗い吹雪の街でこそふさわしいのであって、不倫を暗い恋と断定してしまっています。
 
しかし最近ではよしんば不倫としても、楽しい不倫、明るい不倫であって、なにも女がカモメを見て泣くとはかぎりません。
 
逆に不倫を正当化して奥さんを追い回すという、強い恋も現れています。